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Arts and Crafts アーツ・アンド・クラフツ
アーツ・アンド・クラフツって何?
産業革命後の大量生産に対し、手仕事や素材の良さを取り戻そうとした19世紀英国発の工芸・デザイン運動です。家具、壁紙、本づくりまで生活全体を美しく整える思想でした。大量生産品のデザインに対して、視覚的なリズムや肌理(マチエール)を取り戻そうとした流れともいえます。図像表現においてリズムを生み出す発想は時代も国も異なりますが日本の琳派に通じるところもあります。
- 時代・潮流
- 1860年代-1910年代
1861年にモリスらが工房を設立したことを起点に以降のアーツ・アンド・クラフツ運動として展開し、20世紀初頭の近代デザインや、後の民藝運動にも影響を与えていくため、ここでは1860年代から1910年代を中心年代とした。

出典
モリスの《Strawberry Thief》は、身近な自然を観察し、植物・鳥・果実を反復文様へ落とし込むアーツ・アンド・クラフツの代表例です。工業的な均質さではなく、染織や壁紙に残る手仕事の密度、自然素材を思わせる色、生活空間そのものを美しくする思想がよく表れています。
- デザインの特徴
- 植物文様、木版画的な面、装飾枠、自然素材の色、工芸的な反復(リズム)。
- 代表的な人物・作家・参照文化
- William Morris イギリス / 1834-1896
Kelmscott Press books and textile patterns - John Ruskin イギリス / 1819-1900
The Stones of Venice - Charles Rennie Mackintosh イギリス / 1868-1928
Glasgow School of Art
- William Morris イギリス / 1834-1896

出典 / ライセンス
ジョン・ヘンリー・ディアールによる刺繍屏風は、家具・室内装飾・テキスタイルを別々の領域に分けず、生活空間全体を工芸として設計するアーツ・アンド・クラフツの姿勢を示しています。植物文様を平面的に反復しながら、刺繍という手仕事の時間と質感が前面に出る点が重要です。刺繍制作では、日本製の金糸が使われた例があります。

出典 / ライセンス
ケルムスコット・プレスは、ウィリアム・モリスが1891年にロンドン、ハマースミスのアッパー・モールで始めた私家版印刷所です。《The Wood Beyond the World》は、書物を情報の容器ではなく、紙、活字、挿絵、余白、装丁が一体となった工芸品として捉えています。中世写本や初期印刷本への参照を近代出版に持ち込み、大量印刷への対抗として「美しい本」を再定義した点が重要です。この版は紙刷り350部、さらにヴェラム刷り(子牛などの皮をなめした皮紙)8部が作られそうです。

出典 / ライセンス
《Toilet Mirror》は、家具を単なる実用品ではなく、絵画、木工、金彩、ガラスが結びついた生活のための総合デザインとして扱っています。フィリップ・ウェッブの構造、バーン=ジョーンズの絵画性、モリス商会の制作体制が重なり、アーツ・アンド・クラフツの「生活芸術」の考え方をよく示しています。過度な装飾のヴィクトリア様式を嫌い、家具や指物のあるべき構造を尊重した上でのデザインという意識が非常によく現れていると思います。

出典
Red Houseは、ウィリアム・モリスがフィリップ・ウェッブとともに作った自邸で、アーツ・アンド・クラフツの思想を建築と暮らしの空間へ広げた重要な例です。壁紙や布の文様だけでなく、建物、家具、庭、室内装飾を一体の生活環境として考える点に、この運動の本質があります。工業製品への批判は、単なる手仕事礼賛ではなく、住まい全体を人間の感覚に取り戻す試みでもありました。
文房具カフェの視点
ヴィクトリア時代の過度な装飾から、その後産業化で大量生産品が増える中、紙、布、製本、木など生活を形づくる素材と技術の質を取り戻そうとした運動といえます。庶民に手の出ない装飾品への反発と、安価だがデザインとして「死んでいる」大量生産品に対しての批判という面をアーツ・アンド・クラフツは持っていましたが、結局はやはり「良いデザインはコストがかかる」というジレンマに陥ったといえます。デザインとコストの関係は現在にまで通じるものですね。
アーツ・アンド・クラフツを起点に、これから現在にまでつながるデザイン・アートの潮流を見ていくわけですが、アーツ・アンド・クラフツの中心的な思想に、デザインやアートを「特権的な一部の人々のためのもの」から「多くの人々の手元へ」、ということがあったことは押さえておきたいです。ウィリアム・モリス自身、非常にユートピア思想、いわゆる社会主義的な思想を背景に持っていたという点は重要です。
次の章へ進む視点
アーツ・アンド・クラフツへの批判・対抗意識から次の潮流へ
手仕事を重んじた一方で、作品が高価になりやすく、理想とした生活の美しさが限られた層に届きにくいという批判がありました。その課題は、量産や機能をどう引き受けるかという問いとして、アール・ヌーヴォー、バウハウス、モダニズムへ受け継がれます。

























